当時中学生だった私が、友達の勧めでBillyjoelを聴き始めて間もないころだった。その友達はBillyjoelが大好きな奴で、貸してもらったテープも素敵なアルバムだった。確か「ストレンジャー」だったと思う。表題曲The StrangerやJust the Way You Areがあって、素直に洋楽の良さを感じていた。楽曲と声の組み合わさり方がなめらかというか、全体が音楽という感じの、しかも心地よい音。家にはモノラルのラジカセしかなかったけど、それでも素敵な時間を提供してくれた。
その友達に「Billyって、いいね」というと、「でしょ!」というので、もっと他のも貸して、とせがんだが、いかんせんケチな奴で、自分が手にしたものは貸してはくれなかった(でも、仲が深まるにつれて貸してくれるようにはなったが)。
Billyについて調べていくと、当時の最新のアルバムは「ナイロンカーテン」という作品だった。彼に「ナイロンカーテンってどうなの?」ってきくと、「持ってない」という。意外なあまり「どうして?」と尋ねると「戦争に絡んだのは嫌いだし、暗いからいやだ」という旨の返事だった。
「そうなんだ」
そんな会話の後、しばらくして彼がはしゃぎながら言ってきた。
「Billyの新しいアルバムがでるんだよ、すげえよ!」
彼はすでに曲を聴いていた。当時、そういう曲の最新情報はラジオだった。ラジオから流れる曲をテープに録音して楽しむ。たしかエアチェックって言ったっけ。
彼はそんなことばかりしていて、それも深夜のラジオの方が情報が早かったようで、いつも寝不足だった。
それが「Tell Her About It」だった。日本語題「あの娘にアタック」で、どんな意味なの? という感じだが、きっとその当時のBillyJoelの私生活にも関連付けていたのかもしれない。確かに、この曲軽快で覚えやすくて、聞いていて楽しくなる。これが、前作「ナイロンカーテン」の次に出すアルバムなのか! という感じだった(僕自身、ナイロンカーテンをすでに聞いていたので)。
ピアノマン的要素の高い曲を好んでいたので、こういう曲はどうなのだろう、とも思ったが、これがこの人Billyjoelなのかもしれない、とも思った、事を覚えている。
アルバム「 An Innocent Man」も全体的に明るく、前向きな作品と思う。自分でBillJoelのベストを作るならばこのアルバムがメインになると思う。そしていまだに聞く「Tell Her About It」は、当時の友だちのことをよく思い出させる。まだアイドルくらいしか知らなかった僕が洋楽という巨大な化け物を前にして、異常なほどにワクワクした毎日を過ごしていたことを思い出させる。
そして、まだ将来のことや異性のことが絡まなかったころの、純粋な生物だった自分を、懐かしく思い出す。
そういえば、この「 An Innocent Man」の一曲目「easy money」のことを当時習ったばかりの英単語を組み合わせて「簡単なお金」って、なんだ? って言っていたことも懐かしい思い出だ。
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