国道20号を走っていて、間違いなく終わったと思ったとき

 もう、ずいぶん前のことです。車で一人旅をしていた時です。関西方面から東京へ帰る道をひたすら走っていました。
 塩尻で国道19号とお別れし、国道20号に入りました。もう日が暮れていました。家に着くのは深夜か、明け方か。
 一人で車を走らせての旅です。焦ることはありません。目的は、その地に着くことではなく、進むことでしたから。

 山梨の道のりは長く、しかしながらメリハリがあったことを覚えています。山の中、街並み、山の中……。当時学生で、いろいろなことに迷っていた自分は、単調な道の中、頭をあちこち巡らせていた。目はしっかり前をとらえていた。道はガラガラだった。バイパスが多いせいか、それほど止まることもなかった。

 神奈川に入り、峠に入った。峠は悪くない。攻めるつもりは全くなく、また乗っている車もそんな性能はないのは知っていたので、危険のない速度で走っていた、と思っていた。

 くねくねした道路、ぽつぽつとある電灯。なんか、つらいな。そう思った。それだけは覚えている。そして、暗く前が見えなくなった。寝たわけではない。電灯がなかったのだ。

 一瞬、右前方に明かりが見えた。「ん?」と思った。それは自分は直進を走っていたからだ。

「やばい!」

 道は暗闇の中で、右に急カーブしていたのだ。しかし、もうハンドルは切れない。前は暗くて何も見えない。思い切りブレーキを踏んだ。

 車が止まった。崖にぶつかったようではなかった。そこは偶然、駐車場につながっていたのだ。私はものすごい勢いで駐車場に入り、急に止まったのだ。

 大きな駐車場で、日中ならば見逃さなかったはずで、この真夜中でも駐車場の中に電灯が数多くあったのを覚えている。

 もし、壁だったら即死だった……。そのあとは、気を付けて帰った。

 残念ながら、その道を通らなくなった。なので、そこが、本当はどうなっているのかは、わからない。

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