フードコートで出会ったおっさんの話

もう、十年以上前の話で、まだ子供が赤ちゃんの頃の話。

近くのやや大きめのスーパー(小さめなショッピングモール)のフードコートで奥さんと子供とお茶をしていた時の事。

夕方4時ごろで、私たちは買い物を澄まし、コーヒーとポテトをつまんでいて、子供はバブバブいいながらおもちゃで遊んでいた。

「かわいいお子さんですね」

そう声をかけていたのは60代ほどの着崩れた男性だった。
子供を褒めてくれる方々は珍しくなく、性別や年齢を聞いたらバイバイってして離れていくのが常だった。
しかしそのおっさんは違った。
「実は私、すごいんですよ。英語もペラペラでね……」
そういいながら、財布を取り出し、名刺大のボロボロの紙切れを出した。
「ほら、ここに書いてあるでしょ」
英語がすごくて表彰されるべき人だけが持つ証書だと言っていた。
あと、どこそこ大学の大学院を卒業して、いまでも引き合いがあって……。
娘はいまイギリスの政府関係者と結婚して、そっちに住んでいる……。

まだまだ話は続いたが、タイミングよく娘が暴れだし始めたので(眠くなるとぐずる)、「では」、と話を切って、二人で娘をあやした。そうすると、なんか、残念そうなことを言いながら私たちの元を離れていった。

周りの人たちの反応を見ると、とくに珍しがってもなく、その人は「いつもいる人なんだな」、と感じた。
たまたま、私たちの番で、「つかまってるよ」という感じだったのだろう。

その時は思わなかっただけど、今思うことは「孤独」ってそういうものなんだろうなって。
きっと、上級な位置に属していたのだろうと思うし、家にはそういった表彰系がわんさかあるのかもしれない。しかし、どんなにすごいものがあっても「孤独」って、どうしようもないんだろうな、って。

歳を重ねると、なんか、怖いなっていう事例ばっかり目についてしまったり、思い出したり……。
楽しいこともあるのだろうにね。

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